May they are fortunate!
街の灯がキラキラ光る夜。街はガヤガヤと様々な賑わいを見せていた。
ほとんどの店は豪華なデコレーションで飾られ、さらに数々のネオンサインが点滅し、幻想的な光景を生み出している。教会のほうからはパイプオルガンの音と美しい聖歌が聞こえてくる。
そう…今夜はクリスマスなのだ。
そしてクリスマスツリーの下に一人の少年が居た。
誰かを待っているからなのか、その少年は腕を組み、目を瞑ってクリスマスツリーにもたれ掛かっていた。そして五分後。
「ワリィ、遅れちまった。」
少年が目を開けると、其処には一人の少女の姿が在った。
少年は腕組みを解き、ゆっくりと微笑みながら言った。
「いや、気にしないで。僕もさっき来たばかりだよ。」
その言葉を聞き、少女は
「ホントか〜?オレは借りを作るのはやだからな!」
と少し頬を膨らませて言う。
少年は苦笑しながら
「嘘じゃないって。来たのはホンの五分前なんだから。」
と言った。
「まあ、いいけどよ。じゃそろそろ行こうぜ、セルジュ。」
セルジュと呼ばれた少年は頷き、
「うん。じゃ、まずは何処に行く?キッド。」
キッドと呼ばれた少女は「う〜ん。」と顎に指を当て三十秒ほど悩んでいたが
「…任せる!」
これがキッドの出した答えだった。
セルジュはまた苦笑し、
「分かったよ。じゃ行こう。」
と答え、歩き出した。
キッドはニッと笑い、
「楽しみにしてるぜ。」
と言い、セルジュと腕を組んだ。
この後、暫く顔が赤くなっていたセルジュであった。

二人はまず、ウィンドーショッピングをする事になった。
幾つもの店が並ぶ中、セルジュが立ち止まった。
キッドは不思議に思い、
「どうしたんだ、セルジュ?」
と声をかけた。
すると、セルジュは片目を瞑り、さらに両手を合わせて
「ごめんキッド。ちょっと待ってて。」
と言い、とある一つの店の中に入っていってしまった。
キッドはわけが解からず(そりゃそうだ)頭の上に?マークを浮かべていた。
五分後。セルジュが戻ってきた。キッドはセルジュが何をしていたのか、訊くことにした。
「おいおい、こんなか弱くて、かわいい娘を寒い中ほっといて何やってたんだ?」
と腰に手を当てて訊いた。
「ごめんごめん。ちょっとこれを取りに行ってたんだ。」
そう言ったセルジュの左手には大きな手さげ袋があった。
キッドは眉を器用に片方だけピクリと跳ね上げ、
「なんだそりゃ?なんか買ったのか?」
と訊くと
「ん〜まあね。」
と返事が返ってきた。キッドは思った。
単なる買い物なら、自分も連れて行ってくれてもいいだろう、と。
それを口に出そうとした時
「取り合えず、ここじゃ邪魔になるからあそこに行くよ。」
とある場所を指差して言った。
「あ、ああ。」
キッドは反射的に返事をしてしまい、しまったと思った。つまり、付いて行くしかなくなってしまったのだ。
「じゃ、行こうか。」
そう言い、セルジュは自らが指差した所に向けて歩き出した。
キッドは首を傾げながらも、セルジュに付いて行った。
セルジュが指差した場所・・・それは噴水とベンチがある、簡単な休憩所の様な所だった。ちなみにその場所は信号を渡ったすぐ側にあるので移動時間は二、三分だった。
「で、此処に連れてきて一体何すんだ?」
キッドがもっともな意見を言う。
「実はね…」
セルジュが笑いながら、がさごそと袋からものをだした。
「な、なんだよ。気持ちワリィな。」
キッドが引きながら言う。
先ほど『笑いながら』と言ったがそれはどちらかと言うとニヤケ笑いに近かった。
「じゃーん!」
セルジュが取り出したもの…それは赤い、レザーロングコートだった。
「どうしたんだそれ?」
キッドがセルジュに訊くが、
「ん?どうしたんだって、キッドへのクリスマスプレゼント。」
極普通の顔でセルジュは言った。
「いいって。高かったろ、それ?」
キッドが両手を前に出して手を振るが
「確かにちょっと高かったけど、キッドにあげるんだから贅沢しようと思ってね。」
と言いつつキッドにコートを渡し、
「キッド、着てみて。」
とセルジュが言う。
キッドは少し迷ったが、折角買ってくれたのに着ないのはもったいないと思い着る事にした。
「どうだ?似合うか?」
キッドが多少照れながら言う。
「うん。似合うよ。」
セルジュは最高の笑顔で答える。
「そ、そうか。」
キッドが返事をした時、顔が赤かったのは照れの所為だけではないだろう。
「寒いから、そのまま着てたら?」
とセルジュが意見する。
「そうだな。じゃ、そうさせてもらうぜ。」
多少落ち着いたがまだ顔が赤いキッドだった。
キッドはふと、思った事を訊いてみた。
「なあ、セルジュ。これいくらしたんだ?」
セルジュは微笑みながら
「うーんと、税込みで五万ちょっとかなぁ。」
…ずいぶん金持ちだな、セルジュ君。
それを聞いたキッドは目を丸くし
「お前、本当にいいのか?」
とセルジュに訊く。
「気にしなくていいよ。クリスマスなんだから。」
セルジュは笑いながら言う。
キッドは頭をポリポリ掻きながら
「…こんな高いもの貰って置いてワリィんだけど、オレが用意してたのはこれなんだ。」
そういうキッドがセルジュに差し出したものはセルジュのトレードマークである、バンダナだった。
「いや、キッドがくれるんだからいいよ。大事にする。」
セルジュは大切そうにそのバンダナを受け取った。
「なあ、あれ着けてみてくれ。」
と今度はキッドが言った。
「うん。」
セルジュは今着けているバンダナを外してキッドに貰ったバンダナを着けた。
「似合う?」
セルジュがキッドに訊くと
「ああ。似合うぜ。」
とキッドも笑いながら言った。
「ありがとう、キッド。」
キッドはニカッと笑い
「いいや。お礼はまだ早いぜ。特別に今夜はオレがメシ、おごってやるよ。」
と言った。
「ええ!?いいよ!まだお金有るから。」
どうやらセルジュにとっては意外な事だったらしい。
「いいから、いいから。さ、メシ食いに行こうぜ♪」
そう言ってキッドは駆け出して行った。
「あ、待ってよキッド!」
セルジュは慌ててキッドの後を追っていき、そして二人の姿は見えなくなってしまった。

これが、僕たちの世界から近くて遠い、一つの世界のお話です。
願わくば、二人に幸があらんことを…


後書き
はい、どうもゼロスです。こんな駄作&恥文を呼んで頂き、有難う御座います。今回が初投稿です。それもネット上でのデビュー作です。 というわけで未熟すぎる僕ですが、とりあえず書き上げる事は出来ました。(無理やり終わらせてますが…)
有難う御座いました。失礼します。