君らしくないあなた
ここはアルニ村。この日セルジュとキッドは魚を釣りに村の桟橋の方に来ていた。(何故かは不明) 天気は今日もすがすがしい快晴…の筈だった。 「あれ…、いつの間に曇ってきたんだろう。さっきまであんなに良い天気だったのに…。」 そう言ったのはセルジュだった。 「おいっ、今ポツッ、てきたぞ!ひどくならねぇうちにとっととお前ンちに戻ろうぜ!」 と、大層慌てた様子でキッドが言い、そのまま走って行ってしまった。 『まだ全然大した程じゃないのに。一体、どうしたんだろう。』 このままキッドを一人にしておくわけにもいかないので、とりあえず、セルジュも戻ることにした。釣った魚が入ったバケツを持った時の渇いた音が辺りに響く。まわりにはもう誰もいない。 「今日は一雨くるかも、な。」 家に帰り、自分の部屋に行く。 …部屋の中は真っ暗だった。カーテンが全部閉め切られている。 「キッド。キッド?いるの?」 「セルジュ…、ここにいるぞ…。」 誰かが彼の上着の裾を引っ張る。キッドだ。ベッドの隅にうずくまっている。 「キッド、一体どうしたんだよ。イキナリ帰っちゃうから、ビックリしたじゃないか。」 セルジュの口調に怒りは感じられなかった。しかし… 「ごっ…ごめ…セルジュ…。」 普段の彼女からは想像もつかないくらい弱々しい声で返事が返ってきた。 今日の彼女は何処か変だ…とセルジュは思った。 「ねぇ、さっきから何か変だよ?キッドらしくないよ。」 「へ…へへ。オレらしくねェ、か。そうだよ…な。」 顔を上げ、いつもの口調で言う彼女はやはり何処か無理をしているようだった。暗くて良く分からなかったが、顔色も悪い。 「オレ…さ、苦手なんだ。その…雷が…。」 雷?セルジュがそう思った刹那、 「…ッッ!」 まるで二人の会話を聞いていたかの如くタイミング良く、辺りに雷鳴が轟く。 一瞬見えたキッドの目は涙ぐんでいた。 「セルジュ…ッ」 あの勇ましかったキッドがこれほどまでに怯えるなんて…、過去に何かあったのだろうか?しかし今はそんなことを問いただしている場合ではない。彼女を安心させてあげるんだ…。 「大丈夫。キッド、僕が…いるから。ね!」 「セル…ジュ…」 再度、雷鳴が轟いた。今度のは先程のよりも大きく響いた。 雨も降っているらしい。風も強い。まるで音楽を奏でているかのように吹いては止み、吹いては止み…。 「や…いやっ!」 恐怖のあまりか、キッドが激しく動揺している。 「落ち着いて!落ち着くんだキッド!」 そう言って彼はキッドを強く抱き締めた。一瞬、キッドの肩がビクン、と震えたが彼女はそれを拒むことはなかった。いつもの彼女なら「フザけるなッ!」と一発殴っていただろう。 セルジュは不安でならなかった。 『このままキッドは別人になってしまうのではないか』 と…。そう思いながら、彼は嗚咽を繰り返すキッドの頬にそっと口付けた。 ……朝が来た。いつの間にか寝てしまっていたのだった。腕の中から声がする。 「やいセルジュ!てめぇいつまでやってんだ!!」 「だ!!」と同時にセルジュは天高く放りだされていた。左の頬を殴られたらしく、痛む。 『いつものキッドだ。』 頬をさするセルジュの顔に、思わず笑みが浮かぶ。 「なっ…なんだよ、気持ち悪りぃな…。ほら、行こうぜ!昨日の続きだ!」 バケツと釣り竿を手に、キッドが桟橋のある方向を指差す。 「うん、そうだね。じゃあ朝ご飯を食べたら行こうか!」 キッドがへへっとイタズラっぽく笑った。 「…セルジュ。」 部屋を出て行きざまにキッドが立ち止まって言う。 「昨日は、ありがとう…。」 終
後書き 皆さんこんにちは、幾星です☆なんだかいきなりキッドが雷嫌いになっていますね(汗)文章滅茶苦茶&意味不明でごめんなさい…。実はわたしも今回の作品が初投稿初デビューなんです。初投稿の場がキッドに刺され隊で、心から誇りに思っております!最後に、編集作業をなさってくださったジイン隊長様、わたしの駄文を最後まで読んでくださった方本当にありがとうございます。心より感謝いたします。では! |